帝王学の環

帝王学の環

才能の結節点

Last updated: 2026/08/27 20:17
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エリート街道

皆さんはスタートアップに対してどのような印象がありますか。

  • 人生一発逆転
  • 持たざる者の成り上がり

など現状に何かしらの不満やコンプレックスを持つ若者たちが、社会的地位や経済的成功を掴むために孤軍奮闘している印象でしょうか。 個人的には、スタートアップは全体的にかなりエリート化が進んでいる傾向にあると思います。90年代によく見られたザ・べンチャーから 成りあがるようなケースは現代においては極めて少ないと感じています。

代わって目立つようになったのが、エントリーすること自体が極めて難しい極秘コミュニティからのお膳立てを受けたスタートアップです。

どういうことか

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CursorもMercorもここから生まれた

最近話題に上がったのが、Etchedというスタートアップです。AI推論に特化したハードウェアを開発しています。 今はチップ単体だけでなくラック規模の推論インフラまでやっています。で、重要なのはこれを誰がやっていて、何故できているのかという話。

  • CEO Gavin Ubertiは現在25歳でMath 55出身の数学チャンピオン(Harvard → Thiel Fellowship)
  • 共同創業のRobert Wachenもおなじく、Harvard→Thiel Fellowship
  • エンジェル投資家として、Peter Thiel, Geoffrey Hinton, Andrej Karpathy, Fei-Fei Li, Scott Wu 等の参画
EtchedのVC・エンジェル一覧

EtchedのVC・エンジェル一覧

こういう人が成功するんだなと思いました。

もしこの記事を見ている「起業したい意識高い系」の学生の方がおられましたら、数学・物理・コンピュータサイエンスを 学ぶために大学へ進学することをお勧めします。可能であれば、工学 or 情報工のいずれか、東京の大学なら尚良しというところでしょうか。

最近はAIの台頭により以前に増して「大学不要論」が提唱されているのですが、この理論はかなりバイアスかかっていると思います。 AIに聞けば分かるというのはその通りなのですが、低レイヤーな抽象概念を理解していないとAIから高度な出力を得たり、 理解したりするのは、かなり難易度高いのですよ。

前提としてUSでドンパチやっている若手起業家たちは圧倒的に数学的能力が秀でているし、大学中退であってもStanford, MIT, Harvard→ Thiel Fellowship行きというケースが多いです。

エリート化というのはこういうところに出ています。Airbnbの成り上がりエピソードはスタートアップのナラティブとして度々持ち出されますが、 あの手のスタートアップは、以来ほとんど出ていないのです。

90年代と比べて若者が浮上するには、今までより遥かに一芸に秀でている必要があると思っています。若者特有のパッションや年齢レバレッジ で乗り切れるほど甘くないだろうと私は考えています。誰がどう見ても「○○については彼に聞けば良い」と思われるほどディグる必要があるし、 そのディグるものが市場としてアタリでなければなりません。


無名の傑作

存在論的には、才能は観測されなくても存在すると考えるのが妥当です。ガラスの「割れやすさ」が実際に割れなくても性質として存在するのと同じように 傾向性は発現条件が満たされない限り顕在化しないだけで、無いわけではありません。

適切な環境に置かれれば高い学習速度を示したはずの人は、置かれなくてもその素質を持っています。ただし認識論的には、観測されない才能は本人含め誰にも判別不能です。 反実仮想(タラレバ系)は検証できないので、実質ないものとして扱われます。

では判断としてどう扱うのが正しいか。二つの帰結があります。

個人の側から見ると、才能の有無を事前に知る方法は存在しないため、「試行して勾配(伸び率)を測る」ことだけが唯一の観測手段です。つまり才能は発見するものではなく、複数領域に短期集中で投資して学習曲線の傾きを比較する、探索問題として扱うのが合理的です。

社会・組織の側から見ると、才能は「発掘されなければ存在しないのと同義」なので、価値は観測機会の設計、つまり試行コストを下げる環境側にあります。多産な分野ほど天才が多く見えるのは、母数と観測頻度の問題です。

結論としては、存在論では「ある」、実用論では「観測するまで無い」が両立し、正しい態度は後者を前提に観測回数を最大化することだと考えます。